2011年12月29日

【本】 本とマンガ、今週の数冊('11 11/03-11/10)

 
  
  
● → 本 
○ → マンガ


宮沢賢治「いちょうの実」「学者アラムハラドの見た着物」

さまざまな作品に触れられてありがたい青空文庫(※)

その中でも宮沢賢治作品が読み放題というのは、
ちょっといいのかしらと思ってしまうほどの贅沢。

教科書に載っている有名作品から、
かなりのファンでなければ知らなさそうな作品まで、300作品近く。

「いちょうの実」は、短い童話。
冷たく透明な空気感、いちょうの葉の金色に目がくらむような表現、
子どもたちの会話のあどけなさ、と、宮沢賢治ならではの魅力満点。

「学者アラムハラドの見た着物」も、魅力的な作品で、
火や水の性質について語られるシーンなんかは宮沢賢治の学者の素養をも感じさせる。

ただし、未完。

タイトルの"着物"も登場しないところで、ぷっつりと終わっていて、非常に残念。
続きを想像してみるのも楽しいものだけれど……。

※ 青空文庫は、日本国内において著作権が消滅した文学作品等を収集・公開しているインターネット上の電子図書館。
すなわち、無料で古典が読み放題。
携帯やスマートフォンからも見られるので、是非!




オーガスト・ダーレス「ソーラー・ポンズの事件簿」

探偵、ソーラー・ポンズを主人公としたミステリーシリーズ。

とはいえ、ほとんどシャーロック・ホームズの贋作。
「ポンズさんはシャーロック・ホームズに似ている」と、
作中で言わせているのが免罪符になっているものの、
パイプから医者の助手まで、似ているレベルではなくホームズそのまんま。

そしてシャーロック・ホームズ譚としては、そこそこ面白い。
作者はクトゥルフ神話体系を良くも悪くも発展(※)させたことで有名。

あまりダーレスのクトゥルフ作品が好きじゃないもので、
半ば軽蔑していた(すみません…)けれど、見直した。

何かを模倣して"それっぽい"ものを作るのが抜群に上手い人なのかも。
現代に産まれていたら売れ先同人作家だったに違いない。

※ ホラー作家、H.P.ラヴクラフトの作品群を「クトゥルフ神話体系」として体系化、ラヴクラフトのメモを元に新作を書くなどした。



施川ユウキ「サナギさん」1〜5巻

すでに連載は終了した四コマギャグ漫画。

中学生の女の子、サナギさんと、その周囲の人たちの日常を描いた、
ほのぼのしつつもシュールな内容。

しかし普通に想像される四コマ漫画とは相当、趣が違う。
シュールと言っても「伝染るんです※1」のように有り得ないことが起きるわけではなく、
中学生の女の子でほのぼのと言っても「けいおん!(原作)※2」のようにただ可愛いわけでもない。
「ぼのぼの※3」の初期にはちょっと似ているけれど、あれよりは身近。

強いて言うと「退屈で仕方のない小学生がぼんやり思っていること」を、
そのまますくいあげたような世界観。

それはやっぱり大人になって見る世界とはまったく違って、
日常よく目にする物ばかりをテーマにしているにも関わらず、
"その発想はなかった!!"と思わされることしきり。

本当に"子供"の感覚を大人が持ち続け、作品化するというのは奇跡的なことじゃないかと、
読めば読むほど感心してしまう。

日本語に対する感性と考察の鋭さも見逃せない。

と、いろいろ書いたけれど、とにかく面白い。笑える。
私にとっては、四コマ漫画で苦しくなるまで爆笑したのなんて初めて!という作品。

公式サイト(http://www.geocities.co.jp/ramuniikun/)で、ためし読みができます。

※1 吉田戦車・作の四コマ漫画(1989年〜1994年)。シュール・不条理ギャグ漫画の元祖的存在。
※2 かきふらい・作の四コマ漫画(2007年〜)。アニメや映画化もされて大ヒット中だが、原作の内容のゆるさは驚愕物。
※3 いがらしみきお・作の四コマ漫画(1986年〜)。ラッコのぼのぼのが主人公の、ほのぼのしているようでそれだけでは済まない。




モーパッサン「初雪」

フランスの作家の作品をほとんど読んだことがなかったので、
名前だけは聞いたことのあったモーパッサンの短編を試し読み。

よく言えば繊細で複雑、悪く言えばじめじめして鬱陶しい、という印象。

男性作家にもかかわらず女性心理を書くのがとても上手だと思った。
ヒロインの心の動きが他人とは思えないほどすんなり理解できて、
それだけに、かえって同属嫌悪でイライラしてしまった。

なんという主体性の無い浅はかなバカ。
こういうことする女いるよ。いるいる。



T.E.D.クライン「復活の儀式」上・下巻

アメリカの田舎で暮らす農家の夫婦と、
そこに夏の間ホームステイしにくる都会人のカップルを中心に話が進んでいくSFホラー小説。

ごく普通の人間のふりをして暗躍し、人々の運命を操っていく"何か"の不気味さが秀逸。

それにもまして印象的なのは都会と田舎の対立や、
登場する二組のカップル間で交差する性欲や嫉妬の生々しさ。

都会の貧困の辛さ、閉鎖的な田舎の辛さも丁寧に描写されており、
苦労しながら何とか生きている人々の生活がじわじわ狂っていくのが怖い。

もっともドキュメンタリー的な内容ではなく、
儀式、魔術、預言者、宇宙から来訪した存在と、ハラハラワクワクしながら読み進められる。

最終的に生き残る人、死ぬ人のチョイスに、作者のオタク的なコンプレックスを感じた。

ところで、作中で"凝った美味しい料理"として出てくるのが
「チキン、豆、ゆでたジャガイモ(原文ママ)」で、大雑把だなあと思った。
アメリカの食事っぽい。
  
  
  
長谷川 菜菜 [PROFILE]
     
   
   
長谷川 菜菜ブックレビュー:インデックス

本とマンガ、今週の数冊('11 10/15-10/22)   
本とマンガ、今週の数冊('11 10/01-10/08)
芳醇な熱帯の夢 -「グアテマラ伝説集」M.A.アストゥリアス
きらびやかな知識の集合体に魅せられて -「黒死館殺人事件」小栗虫太郎
植物化の蔓延する時代に -「デンドロカカリヤ」安部公房
空想を忘れた者への矯正具 -「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ
終わらない堂々巡り -「ドグラ・マグラ」夢野久作
   
   
posted by ジャンク派 at 13:29 | Comment(6) | 【ブックレビュー】
この記事へのコメント
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