2011年10月23日

【本】 本とマンガ、今週の数冊('11 10/1-10/8)

獄門島.jpg
  
  
● → 本 
○ → マンガ


吉田戦車「逃避めし」

吉田戦車のエッセイは読むとじんわり不安になる。
自転車も観覧車も、めしも。(※)
基本は緩い面白みなのだけど、チラリチラリと覗くノイローゼ感。
自由業の神経質な中年男性のリアル、みたいなのが、本業(マンガ)に比べて出ている。
めしは美味しそう。

※「吉田自転車」「吉田観覧車」というエッセイがある。



横溝正史「獄門島」

  
うーーん、面白いねえ!
今さらなんだけど、最近読んだ本の中で抜群に面白い。
夢中で読んでしまった。
放送禁止用語なんてつまらない物がなければ(「き○がい」という一言が無いと成り立たない作品なので)
これこそ映像化して映えるだろうに。
古い作品しか無い。
事件と関係ないところでびっくりするのは、岡山県が海賊で有名だったということ。



アガサ・クリスティ「アクロイド殺人事件」
  
こちらも面白いねえ!
クリスティの中で、三本の指に入るだろう名作。
獄門島といい、有名古典の外れなさよ。

結末はもう知っているので、コロンボ(※1)を見るような気持ちで、
ポアロの一挙一動にじりじりしながら読んだ。
解説に書いてあった、ヴァン・ダイン(※2)
このトリックに文句をつけたというエピソードが、なんだか微笑ましい。
感傷的なクリスティと理屈っぽいヴァン・ダインて、いかにも気が合わなそうだ。

※1「刑事コロンボ」アメリカで制作・放映された、警察官コロンボを主人公としたテレビシリーズ。
※2ミステリー作家。名探偵ファイロ・ヴァンスの生みの親。




エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人事件」、「盗まれた手紙」
  
どちらも、小説の名探偵の元祖と言われているオーギュスト・デュパン物。
デュパンが登場する作品は3作しかないけど、どれも出来は抜群。

読むと、シャーロック・ホームズというキャラクターは、
かなり臆面もなくデュパンを取り入れていることがわかる。
ホームズのある回では、トリック自体もまんま使っているし。

でも、暗くて理屈っぽくてセリフの長いデュパン
(その辺はファイロ・ヴァンス(※)に受け継がれたのかも)より、
ホームズの方が正直魅力的だ、と、個人的には思う。

青は藍より出でて藍より青し。
それにしても、当時のヨーロッパって男二人で引きこもって住むの、普通なの?

※ミステリー作家ヴァン・ダインの創作した名探偵。良くも悪くも、薀蓄をひけらかすことで有名。



綾辻行人「霧越邸殺人事件」

吹雪の洋館で起こる、北原白秋の童謡をテーマにした見立て殺人。
クラシックな舞台立てながら、結末のつけ方はスマート。
動機は、出版当時どうだったかわからないけど、今となってはちょっと陳腐かな。

でもそこを作中でちゃんと批判している。
作中の“名前”へのこだわりや、美術文芸の蘊蓄も効果を上げていて素敵。
母校の校歌の作詞が北原白秋だったから、どういう人物だったのか簡単に知ることができたのもよかった。


  
中山敦支「ねじまきカギュー」1、2巻

ネギまとネウロ(※)を混ぜてスピード感を加えた感じ。
“怪物系女子”から異常にモテてしまう女難体質の先生と、先生を守って戦う女子高生カギューちゃん。
ストーリー全体を貫き、巻き込んでいくのはカギューちゃんの超・純愛。
そして各“怪物系女子”達の狂気のはっちゃけ具合が、並のハーレム漫画とは一線を画す。
絵は癖があるけど可愛い。

※赤松健「魔法先生ネギま!」、松井優征「魔人探偵脳噛ネウロ」



マイケル・イネス「アプルビイの事件簿」

「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」というシリーズの中の一冊。(※)
ロンドン警視庁副総監、アプルビイが主人公の短編集。

「死者の靴」、「ハンカチーフの悲劇」は、そういう体裁ではないんだけど、
どっちも“読者に挑戦”物としていい出来。
ちゃんと推理の材料が提出されている。

それ以外にも収録されている全話を通して、
トリックのキレの良さや起承転結の決まり具合は相当ハイレベルだと思う。

そのかわりキャラクターを描くのも動かすのも下手みたい。
登場人物達が何を考えてどうしてそんなことをするのかよくわからず、
そのわからなさが(おそらく作者の狙いではない)一種の不気味さになっている。
特に、「終わりの終わり」って話の終わり方(ややこしい)は悪夢みたいだ。

主人公のアプルビイも、妻子もちで教養があって仕事のできる、ごく一般的なエリートの様子
(しかしアプルビイと奥さんの会話だけは、妙にリアルでおかしい)。

訳も良くないのかな。
「どうして彼女が彼と会うことに同意したのか、私には理解できない」とか、
いわゆる翻訳文体で、内容が掴みにくい。
原作がそういうくどくど持って回った文体で、それに忠実なのかもしれないけど。

※創元推理文庫から出た、ホームズと同時代の探偵の作品を集めたシリーズ。
ここでしか読めない作品が多くて素晴らしい。




倉田嘘「百合男子」

百合(※1)を愛しながら、自分(男)が百合の世界にもっとも邪魔な存在であることに苦悩する男子。
女子同士のいちゃいちゃをより近くで見たい、けれどその空間に自分(男)がいてはならない。
バカバカしいまでの苦悩ぶりと、百合への迸る愛がウザおかしい。
主人公が一見イケメンなだけに、すごく残念な感じ。
わたくしも腐女子(※2)でないこともない身なので……ちょっと気持ちはわかる。

※1百合(ゆり)とは、女性の同性愛、またはそれに近い友愛のこと。
また、そのようなものを題材とした日本の漫画、ライトノベル、アニメ、同人誌などの作品のジャンルのこと(Wikipedeiaより)。

※2腐女子(ふじょし)もしくは腐女(ふじょ)とは男性同士の恋愛を扱った小説や漫画などを好む女性のこと。
「婦女子」(ふじょし)をもじった呼称である(Wikipedeiaより)。


  
  
  
長谷川 菜菜 [PROFILE]
     
   
   
長谷川 菜菜ブックレビュー:インデックス
   
芳醇な熱帯の夢 -「グアテマラ伝説集」M.A.アストゥリアス
きらびやかな知識の集合体に魅せられて -「黒死館殺人事件」小栗虫太郎
植物化の蔓延する時代に -「デンドロカカリヤ」安部公房
空想を忘れた者への矯正具 -「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ
終わらない堂々巡り -「ドグラ・マグラ」夢野久作
   
   
posted by ジャンク派 at 23:29 | Comment(1) | 【ブックレビュー】
この記事へのコメント
今回から、長谷川さんのブックレビューのスタイルがガラッと変わりましたねー!
しかし、この圧倒的な読書量には驚かされます……
   
Posted by ジャンク派 at 2011年10月23日 23:42
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